月2万円の決断
地元に戻るという選択
「このままじゃダメだ」
子どもができたと分かったあと、僕は期間社員を辞め、地元に帰る決断をした。
逃げじゃない。
腹をくくったつもりだった。
両親が「まだ間に合う」と言ってくれた。
紹介してもらったのは、10畳ほどの小さな仕出し料理の職場だった。
中卒。手に職もない。未熟。
でも今思えば、あのとき差し伸べてくれた手に感謝しかない。
あの夜、通帳を閉じたあと、布団の中で何度もつぶやいた。
父親になるのに、貯金ゼロ。
現実は何ひとつ整っていなかった。
翌朝、目が覚めた瞬間に思った。
――今日、何かを変えないと、一生変わらない。
最初にやめた3つのこと
まず手をつけたのは、分かりやすい浪費だった。
酒。
キャバクラ。
パチンコ。
どれも「やめたほうがいい」と分かっていた。
でも正直に言うと、やめたくなかった。
仕事終わりの一杯は唯一の楽しみ。
キャバクラは“頑張ってる自分へのご褒美”。
パチンコは、現実を忘れられる時間だった。
でも考えた。
これ、父親に必要か?
答えはすぐ出た。
必要ない。
とはいえ、簡単じゃない。
何度も行って、やめて、また行って。
完全に断ち切るまでに数ヶ月かかった。
ネオンを見ると足が止まる。
「一回くらいいいか?」と何度も思った。
そのたびに、ゼロの通帳を思い出した。
固定費を初めて見た日
次にやったのは、支出の書き出しだった。
家賃
光熱費
スマホ代
保険
食費
今でいう「固定費管理」だが、当時の僕はそんな言葉も知らない。
ただ紙に書いて、愕然とした。
スマホは無駄に高いプラン。
使っていないサービス。
コンビニのATM手数料。
「俺、どれだけ適当に生きてきたんだ」
情けなかった。
でも同時に思った。
削れるじゃん。
派手な節約じゃない。
無駄をやめるだけ。
それで月1万円以上浮いた。
月2万円という覚悟
貯金額を決めるのに迷った。
5万円?無理だ。
1万円?甘い気がする。
悩んで決めたのが、月2万円だった。
頑張れば届く。
でも気を抜けば崩れる。
そのライン。
給料日に、先に2万円を別口座へ移す。
今思えば“先取り貯金”だ。
当時の僕はそんな言葉も知らなかった。
でもこの習慣が、後の人生を大きく変えることになる。
最初の1ヶ月は地味にきつい
正直、きつかった。
飲み会を断る。
コンビニで何も買わない。
パチンコ屋を素通りする。
周りは楽しそうだった。
当時流行っていたセドリックも手放した。
見栄とプライドも一緒に売った気がした。
「俺、何やってるんだろう」
何度も思った。
でも月末。
通帳を開くと、そこには確かに2万円が残っていた。
たった2万円。
でもゼロじゃない。
初めて、自分の意思で守れたお金だった。
やればできるかもしれない
通帳を見つめながら、しばらく動けなかった。
誇らしい、というより驚きだった。
「やれば、できるかもしれない」
今までの僕は、稼ぐことはできても、残すことはできなかった。
でもこの2万円は違う。
偶然じゃない。
ギャンブルじゃない。
自分で選んだ結果だ。
小さな数字だ。
でも僕にとっては、人生で初めての前進だった。
父親になる資格は、完璧であることじゃない。
逃げずに、一歩ずつ変わることだと、このとき初めて思えた。
月2万円。
それは大金じゃない。
でも僕の人生を動かした、最初の一歩だった。
もしこの記事を読んでいるあなたが、
「今さら遅い」と思っているなら。
2万円じゃなくてもいい。
1万円でもいい。
ゼロを抜け出す一歩が、人生を変える。
あの日の僕がそうだったように。
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