コロナショックから少し時間が経った。
相場はゆっくりと戻り始めた。
評価損だった銘柄が、
気づけばプラスに変わっている。
あれだけ赤かった画面が、
少しずつ緑に染まっていく。
嬉しかった。
正直に言うと、
少し誇らしかった。
「ほら、やっぱり持っててよかった」
そんな声が心の中に出てきた。
でも同時に、
別の感情も顔を出す。
――今、売った方がいいんじゃないか?
――もう十分じゃないか?
増え始めると、
人はまた揺れる。
恐怖とは違う。
今度は“欲”だ。
もっと増えるかもしれない。
でも、減るかもしれない。
利益が出ると、
それを失う怖さも生まれる。
暴落のときよりも、
静かで、やっかいな揺れだった。
このとき、僕は改めて思い出した。
自分のルール。
余裕資金でやる。
現金は半分以上残す。
旧つみたてNISAは止めない。
毎月33,333円。
あのとき決めたルールは、
暴落のためだけのものじゃなかった。
順調なときのためのものでもあった。
そして僕は、
何もしないという選択をした。
売らない。
増やしすぎない。
淡々と続ける。
画面を開く回数も減らした。
毎日の株価チェックをやめた。
やることはもう決まっている。
考えすぎない。
ルールの中で動く。
それだけだ。
この頃から、
投資は刺激ではなくなった。
ゲームでもなくなった。
生活の一部になった。
歯磨きみたいなものだ。
やらないと気持ち悪い。
でも、やっても興奮しない。
ただ、積み上がる。
ここでようやく、
僕は気づき始めていた。
投資は「勝つこと」じゃない。
続けることなんだと。
そして、
増え始めたこの時期に
もうひとつ思ったことがある。
“このお金は、どこへ向かうんだろう?”
まだはっきりとは言葉にできなかった。
でも、
増やす理由を考え始めたのは
この頃だった。
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