【第8話】父と息子のカラオケ時間を、僕は止めてしまった【40歳バイト日記】

昨日のバイトで、

かなり胸に残る出来事があった。

たぶん、しばらく忘れない。

もしかしたら、

僕が一言確認していれば、

守れた時間だったかもしれない。

最近、ようやく電話予約も取れるようになってきた。

最初は電話が鳴るだけで緊張していたけれど、

名前、人数、到着時間、電話番号。

ひとつずつ確認して、

少しずつ慣れてきた。

昨日も、1本の電話がかかってきた。

「40分後くらいに着きます。2人です」

そんな予約だった。

僕はいつものように、

名前と電話番号を聞いて、

「お待ちしております」と伝えた。

そのとき、お客さんが言った。

「大人と、息子の2人で行きます」

ここで、少しだけ引っかかった。

“息子”

その言葉が、頭に残った。

うちのカラオケ店は、完全会員制だ。

アプリがないと、基本的には入れない。

さらに、年齢によって利用できる時間帯にもルールがある。

中学生や高校生以下は、

利用できる時間に制限がある。

だから本当は、

この時点でもう少し深く確認するべきだった。

でも僕は、そこまで気が回らなかった。

「当店のアプリはお持ちですか?」

そう聞くと、お父さんはこう言った。

「あ、息子が持ってるから大丈夫です」

それを聞いて、僕はそのまま電話を切った。

少しだけ気になったけれど、

そのまま通してしまった。

40分後、予約のお客さんが来店した。

そして、嫌な予感が当たった。

お父さんはアプリを持っていない。

息子さんがアプリを持っている。

ここまでは、電話の通りだった。

でも問題は、その先だった。

息子さんは、まさかの中学生だった。

アプリ上の登録も、しっかり“中学生”。

そして、うちのシステムでは

中学生は18時以降、

中学生だけでの利用ができない設定になっている。

そのため、

アプリ上で会員QRコードが出てこない。

つまり、

そのままでは受付が進められない。

ここで、一気に冷や汗が出た。

「すみません、お父さん、免許証を見せていただけますか?」

そうお願いした。

お父さんのアプリを新しく登録して、

本人確認ができれば、

入店できる可能性があった。

でも、返ってきた答えはこうだった。

「近くだから、免許証持ってきてないんです」

ここで、ほぼ詰んだ。

うちの店は、

会員であっても、非会員であっても、

結局、身分証の確認が必要になる。

非会員ならなおさら、

身分証を控えないといけない。

つまり、

どのルートでも身分証がないと入れない。

店長に確認した。

答えは、やはりダメだった。

そこからは、

ひたすら説明して、謝るしかなかった。

お父さんは、どうにか入れないかと、

財布の中を探したり、

スマホの中に身分証の写真がないか探したりしていた。

その姿を見て、

すごく伝わってきた。

「ああ、この人、本当に息子との時間を大事にしたかったんだな」

たぶん、ただカラオケに来たかったわけじゃない。

息子と2人で過ごす時間。

それを楽しみに来たんだと思う。

でも、どうにもならなかった。

最後に息子さんが、

少し残念そうに言った。

「もういいよ、お父さん。帰ろう」

その言葉が、妙に胸に残った。

全部ひっくるめて、

僕が悪いと思う。

もちろん、ルールはルールだ。

店としては間違っていない。

でも、

あの時間を守れる可能性は、

電話の時点であった。

僕が一言、

「息子さんは何歳くらいですか?」

そう聞けていたら。

さらに、

「お父さんも、入れない可能性があるので身分証をお持ちください」

そう伝えられていたら。

あの2人は、

無駄に40分かけて来ることはなかったかもしれない。

カラオケの受付って、

ただ部屋を案内するだけじゃない。

その場その場で、

一瞬で判断しないといけない。

年齢。

時間。

会員登録。

身分証。

たった一言の確認で、

防げるトラブルがある。

それを昨日、痛いほど思い知った。

僕も、父親だ。

年齢的にも、

お父さんの気持ちがわかる。

息子さんも、

うちの次男と同じくらいの年齢だった。

だから余計に、

あの2人の空気が頭から離れない。

楽しみにしていた時間を、

僕の確認不足で止めてしまった。

それが、悔しい。

もちろん、こういうルールがあるからこそ、

店は安全に回っている。

トラブルも減る。

全国チェーンだからこそ、

統一された仕組みが必要なのもわかる。

でも、その仕組みの中で働く以上、

僕にできることもある。

ルールを守るだけじゃなく、

その前に防げることを防ぐ。

それが、接客なんだと思う。

昨日の父と息子の顔は、

たぶんしばらく忘れない。

でも、忘れない方がいい。

こういう悔しさは、

次に活かすためにある。

次からは必ず聞く。

「お連れの方は何歳くらいですか?」

「お父さんも身分証をお持ちください」

たったそれだけで、

守れる時間がある。

昨日、僕はひとつ失敗した。

でも、

次に同じことを繰り返さないなら、

それはただの失敗じゃない。

そう思いたい。

あなたなら、どう思いますか?

こういうとき、

あなたなら電話の時点で気づけましたか?

それとも、

現場に立って初めてわかることだと思いますか?

もしよかったら、

「自分ならこうするかも」

というのがあれば、ぜひ教えてください。

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