今日は、ちょっとだけうまくいった。
バイト4日目。
昨日までとは違った。
動きが少しわかる。
次に何をすればいいか、ほんの少し見える。
声も出せた。
社員さんとも自然に話せた。
「頑張ってますね」
その一言が、地味にうれしかった。
今日、60代後半くらいのお客さんの部屋に入ったときのこと。
デンモクの使い方がわからない様子だった。
「民謡歌いたいんだけど、どこにあるかわかる?」
正直、僕はカラオケにあまり行かない。
民謡なんて歌ったこともない。
しかも機種はジョイサウンド。
探し方が正解だったのかもわからない。
本当は一度報告すべきだったのかもしれない。
それでも、とりあえず必死に探した。
曲名検索。
ジャンル検索。
思いつく限り触ってみる。
数分間、部屋の中で一緒に画面を見つめた。
結局、見つからなかった。
「ごめんなさい、ちょっと見つからなくて…」
そう言うと、
「いいよいいよ、ありがとうお兄ちゃん」
そう言ってくれた。
その一言で、救われた。
僕の働いているカラオケは持ち込みOK。
テーブルの上には焼き鳥が山ほどあった。
「これ、1串あげるよ」
とっさに断った。
「いや、大丈夫です」
でも何度も勧められた。
断り続けると、
なんとなく空気が変わりそうだった。
じゃあ、ありがとうございます。
受け取った。
でもその場では食べなかった。
仕事中だし、
さすがにまずいかなと思った。
そのまま持ち帰り、社員さんに聞いた。
「こういう場合ってどうすればいいですか?」
答えはシンプルだった。
「残念だけど、破棄してください。」
会社のルールだから仕方ない。
頭ではわかっている。
でも、正直つらかった。
僕は食品ロスが大嫌いだ。
以前、仕出しの仕事をしていたからなおさらだ。
食べられるものを捨てるのが、どうしても嫌だ。
本音を言えば、
あの部屋で「うめー!」って言いながら
くれた本人の前で食べたほうがよかったのかもしれない。
最初から、もっと強く断るべきだったのか。
それとも、会社のルールを優先するのが正解なのか。
今日はうまくいった日だった。
動けた。
褒められた。
昨日より確実に前に進んだ。
それでも最後に、
焼き鳥をゴミ箱に入れた瞬間が、頭に残っている。
仕事って、
自分の正義だけでは動けない。
でも、人としての感覚も失いたくない。
明日はもう少し、
うまく立ち回れるだろうか。
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